先日、夫が亡くなりました。相続人は、妻の私と未成年の息子のみで、自宅を私の名義に変更したいと考えておりますが、どのような手続きが必要でしょうか。

まず、民法には、相続が発生した場合に、誰が相続人となり(これを法定相続といいます。)、その相続分がどれだけになるか(これを法定相続分といいます。)が規定されています。例えば、相続人が配偶者と子3人の場合、その法定相続分は、配偶者は2分の1(6分の3)、子はそれぞれ6分の1となります。また、誰がどれだけ、どの遺産を相続するかは、相続人全員の協議により、自由に決めることができます。例えば、全ての遺産を配偶者が相続するとか、不動産は長男が、預金は長女が、その他は配偶者が相続するというように決めることができます。この協議を遺産分割協議といいます。

今回は、法定相続分で名義変更(妻2分の1、息子2分の1)するのではなく、遺産分割協議により妻一名の名義へ変更することになりますが、子が未成年者の場合、その子はこの遺産分割協議に参加することが出来ませんので注意が必要です。なぜなら、民法には、未成年者は原則として単独で法律行為ができないと定められており、遺産分割協議もこの法律行為に該当するからです。通常、未成年者が法律行為をする際には、代理人は親権者である親が務めますが、今回の遺産分割協議については親と子が同じ相続の当事者となり利益相反(親の利益が増えると、子の利益が減る状況)することになりますので、親が子の代理人となることができないのです。この場合、未成年者の代理人として、家庭裁判所で特別代理人を選任してもらう必要があります。そして、その特別代理人が未成年者に代わって、親との間で遺産分割協議を行うことになります。

[特別代理人の選任手続きについて]

 特別代理人を選任するには、親権者または利害関係人が、未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所に特別代理人選任の申立てを行います。

 申立ての際、特別代理人候補者をあらかじめ擁立することができますが、最終的に選任されるかは家庭裁判所の判断となります。特別代理人に選任されるために、特に資格は必要ありませんが、特別代理人は未成年者の利益を保護するために選ばれるものなので、その職務を適切に行えることが必要です。通常、未成年者との関係や利害関係の有無などを考慮して、適格性が判断されます。利害関係がなければ未成年者の親族(祖父母、おじ、おばなど)が選ばれることもありますし、擁立した候補者が適任でないと判断され、他の親族や法律家が選任されることもあります。

 また、通常、申立ての際に家庭裁判所へ遺産分割協議書の案を提出しますが、その遺産分割協議の内容が、未成年者に不利なものであれば、特別代理人の選任は認められないのが原則なので、未成年者の利益が守られているものとなっている必要があります。