『権利証』という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。一般的に、権利証とは売買等により不動産の権利(所有権)を取得した者(買主)に対し、登記完了時に法務局から交付・通知されるもののことを言います。

 そもそも、この権利証にはどのような役割があるのでしょうか。例えば、不動産を売買して買主に登記名義を変更するには、売主・買主ともに必要書類を整えて法務局へ登記の申請をしなければなりません。その際、売主の所持している権利証も法務局へ提出することになりますが、不動産の所有権を失う立場である売主が、本当に手続きに関与しているのか、売却する意思はあるのか等を法務局が判断する重要な役割を果たすのが権利証なのです(権利証は、上述のとおり不動産の権利(所有権)を取得した者だけが所持しているはずのものです。) 。

 なお、権利証は正式な名称ではなく、法律(不動産登記法)上は、『登記済証』といいます。さらに現在では、不動産登記法の改正により、インターネットを利用した登記手続きを行うことができるようにするため、『登記識別情報』という登記済証に代わる12桁の数字と記号(アルファベット)の組み合わせの番号が発行されることになりました。見た目は全く違うものですが、『登記済証』も『登記識別情報』も法務局から交付・発行され、実質的に同じ役割を果たすものです。

※上記のとおり『登記済証』、『登記識別情報』は一般的に『権利証』と呼ばれているため、本記事内で『権利証』と記載したものは、その両方を意味するものと致します。

権利証を紛失した場合は?

 権利証を紛失した場合、再交付・再発行されることはありません。また、権利証を使って勝手に不動産を売買等されないかが問題となりますが、権利証のみで売買等の登記手続きが完了してしまうことはありません。売買等により名義変更をする場合には、売主の権利証のほかに、実印を押印した書類や印鑑証明書等が必要になります。したがって、悪用されることを防ぐために『権利証』、『実印』、『印鑑カード』は同一場所に保管しないことをお勧めいたします。

 次に、権利証を紛失している場合、売買等することができなくなるのかが問題となりますが、権利証を紛失していても、売買等することはできます。しかし、通常の手続きの場合と比べ、時間や費用が必要となる場合がありますので、やはり権利証は大切に保管してください。