次の事例では、AさんとCさんのどちらが所有者として認められるでしょうか?

 Aさんが念願のマイホーム生活をするために、Bさんから家を買うことに決めました。Bさんと契約も済ませて、代金の支払い、引越しもしました。しかし、家の登記名義の変更手続きはよくわからないし、費用もかかるので、そのまま(B名義のまま)にしていました。

 1ヶ月後……幸せなマイホーム生活を送っていたところ、突然Cさんから「この家は私の家だから、出ていって欲しい」と言われました。

 驚いたAさんは、Bさんに事情を聞きにいくと、Aさんに売った1週間後にCさんからAさんの倍の金額で買いたいとの申し出があったので、Aさんに売ったことを言わずに売ってしまったとのことでした。

 Aさんは、「先に契約したのは、私なので私が所有者だ」とCさんに主張しました。

 ところが、Cさんは、「不動産の登記手続きはもう済ませており、先に登記したのは私なので、私が所有者だ」と主張してきました。

 実際に不動産の登記簿を見てみるとCさんが所有者となっていたのです。

 答えはCさんです。

 法律(民法177条)には、「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。」と記載されています。

 分かりづらいですが、簡単に言うと、不動産を購入した場合には、不動産登記の(所有者の)名義変更をしておかないと第三者(今回の場合、Cさん)に自分が所有者であるということを主張できないということです。

 一方、Cさんの立場からすると、Cさんは登記をしたので、第三者であるAさん(AさんはCさんからすると第三者に該当します)に自分が所有者であると主張できるのです。

 ですから、Cさんが所有者として認められ、Aさんは出て行かなければならないのです。不動産の所有者はどちらが先に売買契約をしたか、どちらが先に家の引渡しを受けたかではなく、どちらが登記名義を備えたのかで決することになるのです。

 なお、この場合でも、家を失ったAさんはBさんに対し、売買代金の返還や損害賠償を請求することができます。しかし、Bさんが海外へ逃亡していたり、すでに売買代金を費消していた場合には、(仮に訴訟を提起しても)返還してもらうことは難しいでしょう。売買代金の返還や損害賠償を請求することができることと、Bさんから実際に返還を受けることができるかどうかは別問題なのです。

 皆さんにこのようなことが起きないためにも、家や土地を買った場合等、権利関係に変更があった場合には、すぐに登記をしておくべきなのです。