所有権移転登記を申請する際の必要書類の一つに権利証(登記済証及び登記識別情報)があります。権利証は紛失すると、再発行(再通知)することはできません。

 売買による所有権移転登記を申請する際に、権利証を紛失している場合には、次のとおり権利証に代わる手続きを行う必要があります(抵当権設定登記の際に権利証を紛失している場合も同様に考えることができます)。

①  事前通知制度を利用する方法

 登記申請書に事前通知制度を利用する旨の記載をして申請します。法務局は、売主(義務者)に対し、登記申請があった旨及びその申請内容が真実である場合は期間内に申出をするべき旨の通知を書面(事前通知書)で行います。事前通知書を受け取った売主は必要な箇所に記名・押印(委任状に押印した印鑑)を行い、法務局へ申出(事前通知書を提出)することで登記手続きを進めることができます。

【注意点】

 事前通知書の発送後、原則2週間以内に必要箇所に記名・押印を行い、法務局へ申出しなければなりません。これを怠ると登記申請が却下されてしまい、買主は売買代金を支払ったにもかかわらず、所有権移転登記がされないということになってしまいます。そのため、売買による所有権移転の際は、下記②及び③の方法を利用することをお勧めいたします。一方、事前通知制度は費用が掛からないため、贈与等、金銭の授受がない所有権移転の場合に適しています。

②公証人による本人確認(委任状の認証)を受ける方法

 売主(義務者)が公証役場に出向き、公証人の面前で司法書士に対する委任状に署名・押印を行います。その際、売主の印鑑登録証明書、運転免許証等の身分証明書を提示することで、公証人に対して、売主に間違いないことを証明し、委任状への署名・押印が真正であるという認証を受けます。その認証を受けた委任状を法務局へ提出することで登記手続きができます。

【注意点】

 認証時には、必ず公証人が売主本人と面談を行わなければならず、その際に手数料として数千円がかかります。公証人が認証した委任状を提出することにより、登記申請手続が、権利証のある場合の手続きとほぼ同様に進められるため、売買の場合にも利用することが可能です。

③司法書士等の資格者代理人が本人確認情報を作成する方法

 登記申請を代理する司法書士が売主(義務者)と直接面談し、運転免許証等の身分証明書や権利(所有権)取得の経緯がわかる資料等(売買契約書等)の提示を受け、権利証紛失の理由等を聴取し、本人であることを確認します。司法書士は、それらの情報に基づき所定の方法で本人確認を行った旨及び売主本人に相違ない旨を記載した本人確認情報を作成し、登記申請書類とともに法務局へ提出することで登記手続きができます。

【注意点】

上記②の方法と同様、本人確認情報を提出することにより、登記申請手続が、権利証のある場合の手続きとほぼ同様に進められるため、売買の場合にも利用することが可能です。ただし、上記①及び②に比し資料等の提示が必要である等手続きが煩雑となりますし、本人確認情報作成の手数料として数万円から十数万円が必要となります。

登記に必要となる手続き・書類等は事案により異なりますので、司法書士法人レラ・カンテへお問い合わせください。