先日父が亡くなったので、母と私と弟の三人で父の遺産分けの話をしました。

私の家族にはもう一人、長年音信不通になっている兄がいるのですが、葬儀にも参列しませんでしたし、手紙を送っても宛所不明で郵便物が戻ってきてしまいます。以前に勤めていた会社や友人に問い合わせてもどこにいるか分からず、警察に捜索願も出していますが、いまだに手掛かりはありません。

相続の手続きはどうなってしまうのでしょうか?

通常、相続が発生した場合、相続人全員で遺産をどのように分けるかについて話し合い(遺産分割協議)をします。しかし、今回のように相続人の1人が行方不明で連絡が取れないと、いつまで経っても遺産分割協議ができません。

このような場合には、行方不明の相続人に代わって遺産分割協議を行う者として、家庭裁判所に『不在者財産管理人』の選任を申し立てることができます。

不在者財産管理人は、従来の住所又は居所を去り、容易に戻る見込みがない者(不在者)に財産管理人がいないときに、利害関係人又は検察官の請求により家庭裁判所が選任します(民法25条)。

不在者財産管理人になるには資格は必要ありませんが、不在者との関係や利害関係が考慮され、場合によっては弁護士や司法書士などの専門職が選ばれることもあります。

なお、財産管理人の権限は、原則として財産を「管理する」ことに限られており(民法103条)、遺産分割協議に参加するなど、財産を「処分する」場合には別途家庭裁判所の許可が必要です。

家庭裁判所に選任された不在者財産管理人は財産目録を作成し、裁判所に報告しなければいけません。また、専門職が選任された場合には通常、報酬が発生し、申立ての際に予納金を求められることもあります。若干面倒な手続きが伴いますので、ご家族に行方不明の方がいらっしゃる方は、あらかじめ相続が発生する前に、被相続人にあたる方に遺言書を作成してもらうなどの準備をしておくことをお勧めいたします。