私(A)は、東京在住のサラリーマンです。先日父が他界し、少しばかり会社から休みをいただき、実家のある小樽に帰ってきています。久しぶりに実家で過ごしていると、母の認知症がずいぶん進んでいることに気付きました。買い物に出かけては、財布をお店に忘れてくるなど、日常生活に支障が出るようになってきていました。
父が生きている間は、父がお金の管理をしていたようで、今後の母の生活が心配です。私の兄弟も、実家の近くには住んでいませんし、私も来月には、東京に戻らなければなりません。他に頼れる親族もいないので、母の面倒を看られる者がいないのです。
老人ホームへの入居は決まりましたが、遠方に住んでいるので、お金の管理などをすることが難しく困っています。
成年後見制度を利用するという手段があります。
成年後見制度とは、認知症、知的障害等の理由により判断能力が不十分な方を保護し、支援するための制度です。なお、成年後見人が選任されても、本人は日常生活に関する行為をすることができます。
成年後見制度には、後見、保佐、補助の三段階に分かれており、本人の判断能力の程度に応じて、支援の程度が変わってきます。なお、本人の判断能力は医師が、専門的な診断により見極めます。
成年後見制度を利用するためには、家庭裁判所に成年後見開始の審判を申し立てます。
今回の場合は、Aさんが申立人となって、母親の成年後見開始の審判申立てをするといいでしょう。裁判所が、成年後見人を付けるのが妥当だと考えれば、成年後見人が選任され、母親の財産管理及び身上監護が後見人に一任されます。
なお、成年後見制度は、あくまで本人(今回の場合、母親)を保護することを目的としますので、申立人(今回はAさん)及びご家族の希望通りの財産管理等がなされるとは限りません。
また、親族などを成年後見人の候補者として申立てすることはできますが、必ずしも候補者が選任されるとは限りません。裁判所の判断で、専門家(司法書士等)が選任されることがありますし、専門家(司法書士等)が成年後見人を監督する成年後見監督人に選任されることもあります。
これからの高齢化社会の中では、より皆様に身近な問題となります。このような問題に直面したときに成年後見制度を選択肢の一つと考えていただければと思います。