誰の委任状が必要か?
司法書士に登記申請を依頼する場合には、司法書士は登記の申請人(依頼者)となる者から登記申請手続きの委任を受け、委任状の交付を受ける必要があります。例えば、売買による所有権移転登記の場合には、売主(現所有者)及び買主(新所有者)から、抵当権設定登記又は抹消登記の場合には、抵当権者(金融機関等)と抵当権設定者(所有者)からそれぞれ委任を受け、委任状の交付を受けなければなりません。
ここでは、ご融資担当者からよくご質問を頂く、抵当権抹消登記の申請人についてご説明いたします(根抵当権抹消登記についても同様です)。
まず、抵当権抹消登記の申請人は、債務者(融資を受けた者)ではなく抵当権設定者であるということに注意して下さい(ご融資担当者は融資を受けている債務者と接触する機会が多いことから間違いやすいところだと思います)。従って、債務者と抵当権設定者が異なる場合(物上保証の場合)や、設定時は債務者と抵当権設定者が同一であったが、その後に所有権が移転して、債務者と抵当権設定者が異なることになった場合には注意が必要です。
次に、不動産を共有(複数人で所有)している場合の抵当権抹消登記の申請人についてご説明いたします。
不動産を共有している場合の抵当権抹消登記の申請人
夫婦で融資を受ける場合や当初の所有者に相続等が発生した場合など、不動産を二人以上で共有している場合、抵当権抹消登記の申請人は、原則共有者全員となります(全員から委任状が必要です)。しかし、抵当権抹消登記は保存行為(※)に該当するため、共有者の一人から申請することもできます(共有者の一人からの委任状で申請できます)。ただ、共有の態様によって、申請人となる者が異なりますので、下記の例で確認していきます(各不動産について、所有者が誰であるかに注目して下さい)。
【土地・建物の共同担保の例】
土地・建物をAが単独所有
土地・建物をAとBが共有
土地をAが単独所有 建物をAとBが共有
土地をAが単独所有 建物をBが単独所有
土地をAとBが共有 建物をCが単独所有
申請人
・A
・A及びB ・Aのみ ・Bのみ
・A及びB ・Aのみ
・A及びB
・A、B及びC ・A及びC ・B及びC
※保存行為とは管理行為の一種で、財産の価値を維持するための行為のことです。
《ここに注意!》
共有者の一人からの申請が可能なのは、抵当権抹消登記等保存行為に該当する場合のみで、抵当権設定登記は共有者全員が申請人となります。
なお、抵当権の設定登記又は抹消登記を申請するにあたり、所有者(所有権登記名義人)の住所氏名が変更され、登記上の住所氏名と現在の住所氏名が異なる場合には、住所変更や氏名変更の登記をする必要があります。